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評価:
吉田修一
朝日新聞出版
¥ 1,890
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【あらすじ】人気ピアニストである湊圭司の兄が起こしたとされるひき逃げ事件。それは、実は、兄ではなく、弟である湊圭司自信が起こしたものであったのだったが、幸いなことに、誰にも真相は見破れず、彼は、平穏な日々を過ごしていたのだった。しかし、そんな平穏な日々は続かなかった。あの事故を目撃したという何者かが脅迫をしてきたのだ。これから何度も脅迫される。そう思った圭司は、彼らの身元を調べ対策を講じることにしたのであったが…。
【感想】
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☆どこが猿蟹合戦?
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なんかタイトルに惹かれて思わず買ってしまったんですが…
ちらっと読んだだけだとほんとに「どこが猿蟹合戦?」って思っちゃうような内容でしたね(^^;
あらすじを読んでいただけるとわかるかと思うんですが、猿も蟹も全く出てこなくて…(笑)
まぁさすがに生き物の猿と蟹がそのまんま出てくるなんてのは想像してなかったんですが...
少なくとも猿村とか、蟹山とか、なんか猿とか蟹とかそういう名前のついてる人が出てくるのかなーって思ってたので、なんかちょっと予想外な感じでした(笑)
なんで「平成猿蟹合戦図」なのかってのは最後の最後で一応明らかにはなるんですが…
なんかちょっとこじつけな感じがしなくもないですかね。
どっちかっていうと、もっと違ったタイトルの方が良かったような気がします。
まぁ本のタイトルとしてはインパクトがあるので、惹かれるっちゃ惹かれるんですが(^^;
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☆ストーリー
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で、ストーリーの方は前半はちょっとクライムノベルっぽい感じではあるんですが…
中盤以降ガラっと雰囲気が変わっちゃったのが独特で面白かったですね(笑)
なんで急にこういう方向に話が進んじゃうわけ〜?ってくらい意外な展開で(^^;
前半は、登場人物も多いし、物語の視点もコロコロ変わるし、正直なところ、なんか野暮ったい話だなーって思ってたんですが…
中盤以降の急展開はスピーディな展開で、読んでてなかなか楽しかったのが良かったです。
ある意味合戦(?)が繰り広げられるんですが、ラストはスカっとするような読後感なので、その辺も良かったなーって思います。
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☆人と人の繋がり
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あと、いいなーって思ったのは、人と人との繋がりが感じられる部分ですかねー。
田舎で一人で住んでるおばあちゃんとか、田舎から子連れで東京に出てきたばっかりのママさんとか、ホステスのママとか、芸大に通う女子大生とか、ピアニストの秘書とか、一見すると全く無関係な人たちが「事件?」を通じてだんだんつながって行くんですよね〜。
で、最終的には、みんなが同じ方向を向いて、目標に向かって突き進んでいく。
なんかちょっと前向きになれるような、そんな人と人との繋がりがいいなーって感じる作品でした。