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評価:
有川 浩
アスキー・メディアワークス
¥ 641
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【あらすじ】そこそこの知名度があり、そこそこの人気もある小劇団「シアターフラッグ」。だが、そんな劇団にとある危機が迫っていた。お金がなく、存続が厳しくなってきたのだ。主宰である春川巧は、思い切って兄である司にお金を貸してくれるように頼んでみるのであったが、そんな彼から返ってきたのは、「2年以内に劇団の収入で300万円返せ。できなければ劇団を潰せ」という過酷な条件なのであった…。
【感想】
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☆貧乏劇団再建物語?
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大赤字で解散の危機に陥ってしまった弟の劇団を、兄が力(とお金)を貸して、黒字体質に立てなおそうって話ですね。
「県庁おもてなし課」の話も似たような感じではあったんですが、こういう再建モノってなんかちょっとワクワクな感じが味わえて好きでした。
今までが大赤字なんだから、ちょっとした小細工じゃもうどうしようもない。やるならやるでバッサリと大ナタを振るうような気持ちでやらないと黒字体質になんかならない。ってなわけで、バッサバッサと今までのやり方を否定して改革していく展開がなかなか面白かったです。
組織の内部の人間からすると、今までそうしてきたし、これからもそうするのが当たり前〜って思ってることって結構あるかと思うんですが、外部の人間から見るとそれっておかしいだろ!って思えるような「ムダ」って結構あるもんなんですよね。
「ムダ」な経費が減って、利益が増えて、しかも見に来てくれるお客さんの「満足度」はどんどん向上していくという。そんな、みんながハッピーになっていくような展開がなかなか気持ちがよかったです。
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☆演劇の魅力?
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あと、この作品は、劇団が舞台になってるだけあって、読んでるとなんかちょっと演劇が見たくなってきちゃいますね。
ドラマや映画と違って、やり直しはできない。とっさに起こったハプニングには、上手くアドリブで乗り越えないといけない。
だから、同じ内容の公演であっても、全く同じになるとは限らない。
そういうのって、手に汗握るような臨場感とか迫力とか、見てる方にも伝わってくるんでしょうね。
また、演技してる俳優さんを直接生で見られるってのもいいですよね。
もしかすると、公演後にサインなんかももらえたり、直接話するきっかけがあったり?
それくらいのファンサービスがあったとすると、ファンとしてはたまらないですよね。きっと。
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☆末っ子の力
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あと、主人公の弟の方。大人なんですが…末っ子キャラがすごく良かったです。
甘え上手で、彼が困ってると、誰もが手を貸さずにはいられない。そんなキャラなんですよねー(笑)
客観的に見ると、だらしなくて何もできないようなダメキャラなのに、みんなに愛されまくって、いつもグループの真ん中にいるようなタイプ。
自分も末っ子なので若干共感できる部分もあったりするんですが…
彼ほど上手くは立ち回れないので、全方位的に愛される彼の性格がちょっとうらやましかったです(笑)