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評価:
浅田 次郎
集英社
¥ 720
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【あらすじ】 人気極道作家の木戸孝之介が文壇最高権威である「日本文芸大賞」の候補になった。しかも、2作品同時にである。しかし、孝之介は喜んでばかりもいられなかった。義母である富江が、これでもう思い残すことはないと言い残し、失踪してしまったのだ。もしや、叔父の経営する「プリズンホテル」に行ったのではないかと考えた孝之介は、「日本文芸大賞」の結果も待たずに、プリズンホテルへと向かうのであったが・・・。
【感想】
プリズンホテル完結編です。
今までは、恋人の清子や義母の富江に暴言を吐きまくったり、乱暴したりで、正直言ってこの主人公の木戸孝之介をあんまり好きになれなかったんですが・・・今作では、まるで人が変わったかのような性格になっていて、富江のことを心配したり、清子のことを大事に思ったり、意外といいやつじゃん〜みたいな部分がたくさん見られたのが印象的でした。
ちょっと捻くれた性格ではあるものの、なんだかんだで周りのみんなのことを大事に思っているし、まわりのみんなからも大事に思われてるんですよね。
家族愛というか、仲間の絆というかそういったものが感じられていいなって思いました。
あと、クライマックスの部分・・・さすがに4部作の完結編なだけあって、なかなか訴えてくるものがあるなって感じました。
4部に渡って読んできたわけだから、登場人物たちにもそれなりに愛着が湧いてくるし、そんな彼らとの「お別れ」のシーンが最後なので、なんか泣けてくるんですよね・・・。
寂しいけれども、旅立ちのときだから、泣いてちゃいけない。そんな寂しいけれども前向きな雰囲気を味わうことができたので、すごく良い読後感を味わえました。
「プリズンホテル」個々の物語としても面白いですが、なんか作品の醍醐味としてはやっぱり全部読んで見ないと味わうことはできないのかなってのを感じました。