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評価:
豊島 ミホ
集英社
¥ 500
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【感想】もし東京で大震災が起こってしまったら…っていう設定の短篇集ですね。
たまたま実家に帰っていて難を逃れたけれども、友人たちが被災してしまった人。
最愛の恋人が震災で亡くなってしまった人。
建物の下敷きになってしまい、動けなくなってしまった人。
避難所生活を余儀なくされたものの、イマイチ実感がわかない人。
震災にあって家族が心配なのに仕事で帰れない人。
14個も短編が入っていて、それぞれの登場人物の立場や震災時にいた場所によって見えている世界がだいぶ違うので、
同じ「震災」という出来事を体験したとしても、感じることは人それぞれ違うんだなぁってのを感じました。
あと、この作品、あの東日本大震災より以前に書かれた作品らしいんですが…
震災前に読むのと震災後に読むのじゃやっぱり全然印象は違うんだろうなって思いました。
以下、印象に残った短編の感想です。
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☆僕が選ばなかった心中、の話
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東京に地震が来るらしいという噂が流れた日、たまたま田舎に帰ったことにより被災を免れた男性の話ですね。
自分はたまたま田舎に帰ったから無事だったものの、友達はみんな東京にいるから音信不通で生死もわからない。
自分だけは助かった。ある意味ラッキーではあるんですが…自分だけ逃げてしまったことに後悔しそうな気もしますね。。。
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☆くらやみ
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育児に疲れ、子供さえいなければと思ってしまった主婦が、震災に逢い娘と共に建物の下敷きになってしまった話ですね。
一緒に埋まっているものの、全く返事がない娘。助けが来る気配もなくふたりともこのまま死んでしまうのか。
一瞬でも疎ましく思ってしまった娘だけが死んでしまったとしたら…母親としてはこれまたずっと後悔を抱えて生きていかなければならなそうですよね。。。
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☆ついのすみか
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老人ホームで勤務中に震災に遭遇してしまったおばちゃんの話ですね。
家のことが心配だけれども、職員が全員家に帰ってしまったら、ここにいる老人たちは生きていけない。
震災とか非常事態が発生したらすぐに家に帰ったりするのが当たり前かと思ってた面もあるんですが…
そういう状態でも仕事をし続けなきゃいけない人もいるんだなってのを改めて感じさせてくれた作品でした。
こういう時でも一生懸命仕事してる人って…立派ですね。
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☆出口なし
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震災直後のどさくさに紛れて、とある建物に火をつけるように言われてしまった男の話ですね。
もちろん、震災直後のことなので、もしかしたら、中で倒れて動けない人がいるかもしれない!
でも、相手はそんなの気にせずに火をつけろという。
食べるものに困って万引き程度なら震災直後はある程度仕方ないのかなって思えますが、無闇に火をつけろってのは酷い話ですね。。。