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評価:
相沢 沙呼,市井 豊,鵜林 伸也,梓崎 優,似鳥 鶏
東京創元社
¥ 714
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【あらすじ】 歴代の映研部員が撮り溜めたビデオテープ。それらは、整理する時間もお金もないまま、部室に保存され続けてきたのであったが、ある日、OBの先輩からそれらを全てDVDにしてくれるという申し出があった。申し訳ないとは思いつつ、彼の好意に甘えることにした映研部員の辻は、大量のビデオテープを送ったのであったが、数日後、一部のテープが破損していてDVDにできないといってビデオテープが送り返されてしまうのであった。そんなはずはないと、辻は友人の葉山とテープを確認するのであったが、それは、よく似せて作られてはいるが、辻が送ったビデオテープではないことが判明するのであった…。
【感想】
1980年代生まれの新人作家による、学園ミステリアンソロジーらしいです。収録されているのは、「お届け先には不思議を沿えて(似鳥鶏)」「ボールがない(鵜林伸也)」「恋のおまじないのチンク・ア・チンク(相沢沙呼)」「横槍ワイン(市井豊)」「スプリング・ハズ・カム(梓崎優)」の5編。読んだことあるのは相沢沙呼さんだけだったので、どんなもんかなーって思ってたんですが、思ったより5人とも面白くて良かったです。どれも学園ミステリで年代も近い作家さんなので、割と似たような雰囲気になっちゃうのかなって思ったりもしたんですが、意外と作者ごとに雰囲気が違ったりしていて良かったですね。
で、どれが一番良かったかなーっていうと、相沢沙呼さんの「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」ですね。前に「午前零時のサンドリヨン」を読んでいて、今回の短編に出てきたのもその登場人物だったーっていうのも大きいんですが、「バレンタインデイの当日に、みんなが持ってきていたチョコレートが、何故か先生の机の上に移動してしまっていた-誰が一体なんのために」というちょっとしたミステリに加えて、主人公の須川と酉乃の2人のラブコメっぽい展開がなかなか面白かったです。好きなのに素直にチョコレートを渡せない酉乃のツンデレぶりがやっぱり愛らしかったです(笑)
あとは、「横槍ワイン」も結構好きでした。「仲間内で映画の上映会をやっていて、薄暗い中でワインとかを飲んでいた状況で、突然一人の女の子がワインをこぼしてしまうという事態が発生。しかし、それは明らかに不自然なこぼし方で、誰かが意図的に彼女にかけたとしか思えない。犯人は一体誰か−」って話なんですが、登場人物は少ないものの、なかなか入り組んだ人間関係が面白かったです。誰が誰を好きで−誰と誰がライバルで−誰と誰が親友で−みたいな。同じサークルに入ってるっていってもみんながみんな仲良しとは限らないですもんね。なんか大学時代をちょっと思い出して面白かったです。
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