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評価:
重松 清
小学館
¥ 1,785
Amazonおすすめ度:
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【あらすじ】
若くして亡くなってしまった妻のふるさとで暮らしたい
という夢を抱いて「希望が丘」へ引っ越してきた田島と
その娘で中学生の美嘉、そして、息子で小学生の亮太の3人。
希望に膨らませて新生活を送るのだったが、
その期待は大きく削がれることになるのであった。
新しく始めた学習塾は、モンスターペアレンツな父兄に
目を付けられたため、生徒が思うように集まらず、
亮太は妻が通っていたという書道教室に通い始めるのだが、
期待していた圭子の思い出は何も覚えていないという。
美嘉は、何も話してくれないが、いじめられている気配が。
何事もうまくいかない田島であったが、さらに
圭子の初恋の相手かもしれないという男の影まで現れて…。
【感想】
まず、作品の雰囲気なんですが、全体的に暖かいです。
ホームドラマチックです。
個性的で愛らしい登場人物がたくさん登場して、
人と人との繋がりがどんどん希薄になっていってるような現代、
こんな人間関係が作れたら素敵だろうなぁと思えるような
暖かいエピソードをたくさん展開してくれます。
また、この複雑に入り組んだ人間関係が面白いです。
入塾してきたマリアという女の子の父親が、妻の圭子の
初恋の相手(?)だったり、その舎弟のショボというヤンキー青年が
息子の亮太が通う書道教室の先生の孫だったり。
塾にクレームを入れてきたモンスターペアレンツの息子が
実は娘の美嘉の同級生だったり、そのモンスターペアレンツの
父親の方は妻の圭子の同級生だったり。
この微妙に複雑で入り組んでる人間関係が色んなトラブルを
引き起こすので読んでいて楽しかったです。
また、トラブルといっても深刻な事態を引き起こすでもなく
円満に解決できていっているのが微笑ましかったですね。
物語としては、全体を通じて1つの長編になっているんですが、
なんか章ごとに、テレビドラマを1話ずつ見ているような
気持ちにさせてくれました。
それぞれの登場人物に愛着が湧いてきて、最後まで
読み終わった後は、「あ〜終わっちゃったぁ」って
気分にさせてくれます。
爽やかで気持ちいい感じで終わるんですが、もっと
この世界に浸っていたいなと思えるような、そんな感じですね。
さすが重松清さんって感じの名作でした。