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評価:
山本 幸久
集英社
¥ 500
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【あらすじ】
中学生の世宇子の家には、両親と弟の他に叔母の美晴が暮らしている。美晴は27歳でまだ未婚である為、実家である父の家に住んでいるのだ。そんな美晴のことを、世宇子も決して嫌いなわけではなかったが、自由奔放で好き勝手なことをしまくる美晴には、家族も振り回されてばかりいた。祖母が亡くなった際には葬式にも出席せずに旅行に出かけてしまうし、世宇子が病気で寝込んでいる際には中学生の世宇子にお酒を飲ませた上に自分は男を家に連れ込む始末。仕事も正社員にはならず、好きなときだけ書店で働いているらしい。そんな美晴に、両親は早くお嫁に行って欲しいと常々思っていたらしいのであったが・・・。
【感想】
自由奔放に生きる叔母さんに振り回される家族を描いたちょっと変わった家族小説です。最近は核家族化が進んでいるせいか、自分の周りには叔父さん、叔母さんが一緒に住んでいるという家族構成の知り合いが全然いなかったので、新鮮に楽しめました。
この作品の場合は美晴さんの存在が強すぎるからかもしれないですが、「叔母さん」という普通の家庭にはいない家族が一人増えるだけで、結構家庭内の雰囲気って違ってくるもんなんだなってのを感じました。母親にとっては、義理の妹だから、いくら好き勝手やってても、娘のように叱るわけにはいかないし、余計な気も使わないといけない。子供たちからみても、相手は立派な大人なわけで、兄弟っていえるほど仲良くなれるわけでもないし、かといって両親とも違う存在。どっちから見てもちょっと微妙な距離感。しかも、美晴さんは自由奔放な性格だから、自分達はその尻拭いまでしなくてはならない・・・。そんな人たちが一緒に生活していくとなると・・・なかなか大変だってのは一目瞭然ですよね^^;美晴さんはマイペースなのでそんなの全然気にしてなかったようですが、こういう環境にお嫁に来てしまったお母さんは大変だなーって思いました^^;
・・・とここまで書いてしまうと、なんかドロドロした感じの物語を想像してしまいそうですが、そんな作品ではありませんのでご安心を。むしろ、美晴さんがカラッとした性格なので、明るく爽やかに展開されていて結構ニヤリと笑えるようなシーンも多かったので面白かったです。自由奔放に好き勝手暴れまくる美晴さん。こういう人が実在しているとしたら、周りの人はそれをフォローするのは大変でしょうが、きっと楽しい毎日を送れるんだろうなーって思いました。
あと、物語のベースは「世宇子」と「美晴」の姪と叔母の関係の話が中心なんですが、その後のエピソードとして、「世宇子」の弟の「翔」が結婚して子供が産まれてからの話も載っていて面白かったです。小学生だった翔が大人になり、娘と息子が生まれ、かつての「世宇子」と「翔」の姉弟の関係を自分のこどもたちの姿に重ね合わせる・・・。そして、そんなところに、あれから20年近く経った「美晴」叔母さんがやってくる。大人になって年を取っても甥と叔母の関係は変わらない。なんか素敵な後日談みたいな感じで終わっていたので読後感が良かったです。