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評価:
朱川 湊人
文藝春秋
¥ 1,680
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【感想】大人になった現在から、ちょっと昔の青春時代や子供時代を振り返ってみて、そういえばあんな変わったことがあったなーってのを思い出す感じの短篇集ですね。
朱川さんって割とノスタルジックな世界観を描くのが上手い作家さんのような気がするんですが…
この作品もそれに違わず、「古き良き昭和」の時代を描いたような雰囲気の作品が多くて、そんな感じが味わえて良かったです。
昔みんなで遊んだ「秘密基地」。同級生と一緒に探しまわった「UFO」。憧れだった近所のお姉さんとの一緒の登下校。
どことなくほんわかするような思い出なんだけど、実はちょっと切なかったり怖かったりする。
そんな思い出話の数々が、なかなか読んでて面白いなって思いました。
以下、印象的だった短編の感想です。
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☆サクラ秘密基地
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学年の違う4人の仲良しメンバーが、桜の木の近くにある廃トラックを秘密基地にして遊んでいた…っていう話ですね。
最近の子供だったら、「危ないからそんなところで遊んじゃいけません!」とか言われたり、
あるいは、そもそもゲームの方が面白いから、そんな秘密基地ごっこなんてして遊んだりしないんですかね?
僕もそういう世代じゃないので、秘密基地で遊んだり…って思い出はないんですが、学年問わず、近所で仲のいい子たちが集まって…ってのはなんかいいなーって思いました。
ラストはちょっと切ない系な話なんですが…読んでてちょっと自分の子供時代を思い出してしまいました。
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☆飛行物体ルルー
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同級生の仲良かった子と、UFOの写真を撮ろう!っていう話になって…って話ですね。
最近の子供はどうだかよくわからないんですが、確かに僕も子供の頃はちょっとUFOとか興味ありましたね。
あんまりお近づきにはなりたくない感じではありましたが…UFOってほんとにいるのかなぁ?って考えてワクワクしてみたり。
そういう架空の世界って想像してみるだけで結構楽しかったりするんですよね。そんなのをちょっと思い出しました。
で、この短編、帯で
「たった7行なのだが、それを読み終わったときの衝撃は、私の読書人生において、これからも忘れないだろう。」
っていう煽り文句がでかでかと並んでたんですが…
確かに、最後の7行の意味を知ってちょっとゾッとしました。
ミステリのどんでん返し…ってわけじゃないんでしょうけど、まさかの結末にびっくりでしたね(^_^;)
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☆黄昏アルバム
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中古で買ったカメラを使って写真を取ると、何故か数枚、自分が取った覚えのない写真が紛れ込んでいて…っていう話ですね。
これだけ書いてしまうと、ちょっとホラーめいた感じで怖くなってしまいそうな気がしなくもないですが…
「その写真が撮られた意味」がわかると、ちょっと切ない系な話に見えてきて面白かったです。
オチは正直言ってあんまり好きな感じじゃなかったんですが、なかなか可哀想な話だなって思いました。