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評価:
中脇 初枝
ポプラ社
¥ 1,470
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【感想】「きみはいい子」というタイトルからほのぼの系(?)な本かと思って読んでしまったんですが…
テーマは「虐待」なんでしょうか。思った以上に重い話でなかなか読み応えがありました。
虐待されている子供がいるクラスの先生視点の話。
虐待している母親視点の話。
虐待されている子供の友だちの親視点の話。
虐待されていた娘視点の話。
決して虐待されている子どもが悪いわけじゃなくて、生まれて来てしまった家庭環境が悪かったがために、虐待されてしまう子ども。
でも、そんな自分に悲観することなく、一生懸命に生き続ける子ども。
実の親からは「きみはいい子」なんて言ってもらえることはないけれども…
側に誰か一人だけでも「きみはいい子だよ」なんて認めてくれる人がいてくれたら少しは救われるんだろうなぁなんてのを感じた作品でした。
重い話ではあったんですが、読んでいてちょっと感じるものがいろいろありました。
虐待されずに普通の家庭に育った…ってだけで幸せって言えるのかもしれないですね。
以下、印象的だった短編の感想です。
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☆サンタさんの来ない家
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新任として赴任してきた小学校で、学級崩壊を起こしてしまう男性教師の話ですね。
新人で小学生の子ども相手にどう対応していいのかわからず、頑張るもののすべてが空回りしてしまう教師。
厳しく接すれば親から苦情が入り、優しく接すれば甘く見られて学級崩壊。
頑張ってるのに、何もかもが上手く行かずに事態はどんどん悪い方向へ…
なんか明らかに不器用なその行動パターンに、なんか自分を見ているようでした(^_^;)
僕が教師でも、きっと壊れていく状況にただオロオロするばかり…なんだろうなぁなんて。
本来ならば子どもを守ってあげなきゃいけない立場の人が、無力だったりすると、子どももある意味不幸ですね。。。
ただ、頑張ってればいい。ってもんじゃない教師の仕事って大変だなって感じました。。。
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☆うばすて山
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昔自分を虐待してきた母親が認知症になり、娘である自分が介護しなくてはならなくなってしまった…って話ですね。
面倒を見てあげてるのに、自分のことが誰なのか全然わかってくれないし、ご飯を食べさせても食べてないって言いはるし、
自分でトイレに行けないからすぐにお漏らししてしまって着替えさせたり掃除しなきゃいけない。
ひとりでどっかいっちゃうかもしれないから、少しでも目をはなせない。
普通の親でも、こんな状況になってしまったら、面倒なんて見てられないって思っちゃいそうですが…
それが、自分を虐待し続けた親だとしたら、一体どう思ってしまうんでしょうね。。。
この親がいなかったら自分は生まれて来なかったわけだけれども、この親じゃなかったら自分はもっと幸せになれたはず。
幼い頃の恨みを思って見捨ててしまおうか、それとも、これでも親だからと思って献身的に尽くそうか。
主人公の心の葛藤が伝わってくるようで読んでてなかなか心が痛かったです。
ちなみに、今回はゼルエルさんの紹介の作品でした。
ゼルエルさんどうもありがとうございました。