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評価:
秋月 涼介,北山 猛邦,米澤 穂信,村崎 友,越谷 オサム,桜坂 洋
東京創元社
¥ 1,785
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【感想】
何故か不可解な殺人事件が次々と巻き起こる、いわくつきの市「蝦蟇倉市」を舞台にしたアンソロジー集2作目ですね。
まぁミステリー作家さんたちが集まって次々と事件を起こすもんだから、殺人事件がたくさん起こる市として有名になってしまうのもわからなくはないですが…
「殺人事件」に慣れてしまって、どこどこで殺人事件が起こった!って言われても全然動じる気配すらない市民たちの行動がなかなか面白いですねー。
同じ市内で、連続殺人でもないのに次々と人が死んでいっても、市民たちは怯えるわけでもなく、この謎はおれが解いてやる!みたいなノリ。なかなかシュールでした(笑)
ちなみに、今作の執筆陣は、秋月涼介さん、北山猛邦さん、越谷オサムさん、桜坂洋さん、村崎友さん、米澤穂信さんといった顔ぶれ。
北山さん、越谷さん、米澤さんは割と好きな作家さんなんですが、やっぱりこの変は話が上手くて面白かったです。
以下、印象的だったお話についての感想です。
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☆さくら炎上(北山猛邦)
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自分の親友がクラスメイトを殺害している現場を目撃してしまった女子高生のお話。
普通ならこんなシチュエーションに遭遇することなんてないかと思いますが…
もし、自分の親友が殺人を犯して逃走していったら、どうしちゃいますかねー?
この主人公は、親友を守るため、事件を隠ぺいする!という手段に出るんですが…
いくら親友とはいえ、殺人事件の秘密を握ってしまって、誰にも話せないっていうのはなかなか辛そうでした。
友情を取るか、正義を取るか。
普通は正義を取るべきなんでしょうけど、親友を売るってのもなかなか大変なことなんでしょうね。
ちなみに、この親友がクラスメイトを殺害したのは、ものすごい唖然とする動機だったりするんですが…
正直言ってそんなことでクラスメイトを殺すなよと思ってしまいました(^_^;)
まぁこんな不条理な事件が起こってしまうのも「蝦蟇倉市」だからこそなのかもしれませんが(笑)
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☆観客席からの眺め(越谷オサム)
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教え子と恋愛関係にあった教師が、めった刺しにされて殺害されていたというお話。
越谷さん作ということもあって、さわやか青春系?と思いきや…
思いっきりダーティな作風だったのがちょっとオドロキでした(^_^;)
簡単に言っちゃうと、教師だったらいろいろやっちゃいたいよね?系?
でもでも、自分は普通のことじゃ満足しないよ系?
具体的にどんな話なのよ!ってのは自主規制で伏せておきますが…
越谷さん作とは思えないくらいのブラック路線でびっくりでした。
ミステリなんですが、うん、こんな教師逝ってよ〜し!な気持ちになるという不思議なお話でした(笑)
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☆ナイフを失われた思い出の中に(米澤穂信)
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叔父が3歳の姪をナイフでめった刺しにするという事件のお話。
米澤さんなのでライトな学園ミステリかと思いきや…
こちらも割と大人チックなシリアス路線のミステリだったので、なかなか楽しめました。
一見すると、頭のおかしなやつが起こした猟奇殺人としか思えないようなこの事件。
でも、裏側を調べてみると単純にはそうとは言い切れない、なんてところが深くて面白かったです。
あれは●●だからとか✕✕だからとか、ニュースで流れてるような一面でしか見ないで物事を判断すると、物事の真相は逆に見えなくなるんじゃないかなーなんて思えた作品でした。