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評価:
池井戸 潤
日本経済新聞出版社
¥ 1,620
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【感想】
とある会社で起こったちょっとおかしなことを、色んな人の視点から描いていく連作短篇集ですね。
パワハラで上司を訴えたり、夜食代わりに車内でドーナツを販売するのを提案してみたり。
最初のうちは、割とどこの会社でも起こりえそうな事柄が出てくるので、社会人やってる人ならいろいろ感じるところがありそう!って思って読んでたんですが…
途中から、なんかおかしいぞ?ってところが、巨大な事件につながっていく感じがなかなか面白かったです。
突如行われる降格人事に人事異動。関与した人物が次々にいなくなる怪。
明らかに誰かの圧力によって何かが隠蔽されているおかしな社内空気。
全ての企業がこういう選択をするとは思わないですが、正義とはなにかを考えさせられる作品でした。
以下、印象的だったお話の感想です。
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☆居眠り八角
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やる気のない古参社員が、自分を叱ってきた年下上司をパワハラで訴える!というお話。
営業部員でみんな必死になって外回りしているのに、遅くに会社を出て早く戻ってくる彼。
そして、会議に出れば居眠りしているような、そんなやる気のない彼なんですが…
古株なだけに上の方に顔が利く、ってのがなかなか生々しくてすごかったです(^_^;)
普通ならやる気のない社員は叱られて当然!かと思いますが…
彼の場合は、それをパワハラだ!って訴えちゃうんですよね(^_^;)
何故いつもやる気のない態度をしているのか、何故上司を訴えるまでに至ったのか。
ある意味物語のキーパーソンと言える彼。
段々明らかになっていく彼の本性がなかなかすごいなって感じでした。
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☆ねじ六奮闘記
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ねじの下請け業者のお話。
元請けの担当者が変わった途端、コストカットを要求され、できなければ容赦なく切り捨て。
こっちにも従業員がいるし、コストカットをしすぎたら食べていけないのに、そんなのお構いなしに無理難題を押し付けてくる発注業者。
景気が悪くて大手企業も苦しくて、コストカットが必須!ってのはわからなくはないですが…
そのしわ寄せを下請けに回されたんじゃ、たまったもんじゃないですよね(^_^;)
下請けの中小企業は給料も少なくてカツカツのところを頑張って働いてるのに全然報われない。
なんか世の中不公平だなぁと感じてしまったお話でした。
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☆コトブキ退社
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社内不倫をしていた女性が、彼と別れたのをきっかけに会社を辞めることになる、というお話。
そんな彼女が、最後に、自分がやった成果として「社内ドーナツ販売」を始めよう!というのがなかなか面白かったです。
ただただ会社の歯車として働き、大した成果も出せなかった彼女。
でも、今回は自分から発案した企画だし、夜にお腹を空かせている社員のためにぜひともこの企画は通したい!
社内根回しをして、ドーナツ屋さんを開拓して、なんだか面倒くさい関門をひとつひとつクリアして…
社内企画をひとつ通すだけでも結構めんどくさいんだなーってのを感じた作品でした。
ただ、なんか前向きな感じのする展開だったのが結構好きでした。
他の話は全部おっさんが主人公なので、これだけが紅一点って感じですね(笑)